参考文献
- (1) Shin K. et al. Journal of dermatological science, 71(2), 130–137, 2013
ホリスティックリサーチセンター(以下、HRC)では、精油のホリスティックな力や個性を日々探究しています。今回発見したのは、肌の創傷治癒に関わる、微生物が形成するバイオフィルムに対して精油が及ぼす効果です。人が外界で生きぬくために必要な肌とその機能を維持するための創傷治癒を阻害するバイオフィルム。そこに精油が与える影響をご紹介します。
図1. バイオフィルムとは
創傷治癒とは、傷を負った際に自らの力で再生する機能を指します。
バイオフィルムとは、微生物やそれらが産生する物質(主に菌体外多糖類、たんぱく質やDNAなど)が集合して出来た構造体を指します(図1)。バイオフィルムは、粘着性が非常に高く抗菌剤や免疫細胞といった外的要因から細菌を守るためのバリアとして機能しております。水などで簡単に洗い流すことが難しく、また抗菌剤や殺菌剤が浸透しにくいため、医療分野においても対応に苦慮しているという側面があります。
わたしたちの皮膚上に存在する黄色ブドウ球菌やアクネ菌などの皮膚常在菌もバイオフィルムを形成することが知られており、人の皮膚から採取された黄色ブドウ球菌もバイオフィルム形成能を有することが報告されています。(1)これらのバイオフィルムは、創傷治癒を阻害する要因の一つであり、また肌の炎症悪化因子である可能性も示唆されています。抗バイオフィルム効果は肌の創傷治癒において重要な役割となります。
今回、ブレンド精油(※)を用いて黄色ブドウ球菌に対する効果を検証しました。ブレンド精油を添加して培養したところ、ブレンド精油を添加した方(図2、グラフ右)が添加しない方(図2、グラフ左)と比べ、バイオフィルム形成量が有意に低下することがわかりました。
図2. ブレンド精油のバイオフィルム形成阻害
試験方法:
黄色ブドウ球菌の懸濁液を作成し、ブレンド精油を添加後、37℃で振盪培養した。
形成されたバイオフィルム量を算出し、ブレンド精油添加ありなしで比較した。
※ブレンド精油:シナモン、クローブ、オレガノの精油をブレンドしたもの
出典:THREE ホリスティックリサーチセンター
研究協力:東京薬科大学薬学部 臨床微生物学教室
さらにバイオフィルムは外的要因から守ることが知られていますが、黄色ブドウ球菌のバイオフィルムにブレンド精油を添加すると、スパイス精油ブレンドを添加した方(図3-a、グラフ右)は添加しない方(図3-a、グラフ左)と比較し、バイオフィルム内の黄色ブドウ球菌に対しても殺菌効果を発揮することが確認されました。
図3-a, b. ブレンド精油のバイオフィルム殺菌効果
試験方法:
黄色ブドウ球菌を一晩培養してバイオフィルムを形成させ、蛍光顕微鏡を用いてバイオフィルム内の細菌の生死を観察した。緑色が生細胞、橙色が死細胞を示す。バイオフィルム形成後にブレンド精油を添加し、傾向顕微鏡観察画像から蛍光強度比をブレンド精油添加ありなしで比較した。
※ブレンド精油:シナモン、クローブ、オレガノの精油をブレンドしたもの
出典:THREE ホリスティックリサーチセンター調べ
研究協力:研究協力:東京薬科大学薬学部 臨床微生物学教室
今回の発見により、シナモン、オレガノ、クローブを混合したブレンド精油は悪玉菌として知られる黄色ブドウ球菌のバイオフィルムに対して「形成阻害」と「殺菌」2つの作用による抗バイオフィルム作用が確認され、悪玉菌による炎症悪化を抑え、創傷治癒の阻害を抑制することが期待されます。
今後もHRCでは、精油のさらなる可能性を探索していきます。
本研究は、2026年3月の日本薬学会第146年会において発表しております。